ヘパリン類似物質はなぜ肌にいいの?~尿素・セラミドとの違い~
保湿効果をもつヘパリン類似物質。尿素やセラミドなど他の保湿成分との違いを解説します。 1. ヘパリン類似物質の…
皮膚科などで処方される「ヒルドイド」を知っている人は多いでしょう。一方、「ヘパリン類似物質」はあまりなじみがないかもしれません。医薬品の有効成分ヘパリン類似物質について薬剤師が解説します。
目次
「ヘパリン類似物質」は「ヒルドイド」などの薬に配合される有効成分(※1)です。ヘパリン類似物質には保湿作用や血行促進作用、抗炎症作用などがみとめられています。
「ヒルドイド」は「ヘパリン類似物質」が含まれる処方薬(医療用医薬品)(※2)の商品名です。
(※1)有効成分とは実際に体に効き目のある成分です。
(※2)医薬品には病院で処方される「処方薬(医療用医薬品)」と、ドラッグストアなどで処方箋がなくても購入できる「市販薬」(「一般用医薬品」や「OTC医薬品」などともいう)があります。
人の体内には、「ヘパリン」という物質があり、血液が固まることを防いでいます。
ヘパリン類似物質は、「ヘパリン」に似た化学構造を持つため、「ヘパリン『類似物質』」と命名されました。ヘパリン類似物質は、水を保持する性質をもつ親水性の部分を多くもつため、高い保湿力があることがわかっています。
ヘパリン類似物質が配合された薬として処方薬であるヒルドイドが有名ですが、市販薬にもヘパリン類似物質が配合された商品は多くあります。
ヘパリン類似物質は、市販薬にも処方薬と同じ量の配合が認められており、市販薬にも同じ量(100g中0.3g)のヘパリン類似物質が配合されています(医薬部外品は除く)。そのため、市販薬でも処方薬と同じ効果が期待できます。
たとえば、小林製薬の『さいき』シリーズやグラクソ・スミスクラインの『HPクリーム』、マツモトキヨシHDの『ヒルメナイド油性クリーム』などは、ヘパリン類似物質が「ヒルドイド」と同じ量(100g中0.3g)配合されています。
高い保湿効果を期待して、「ヒルドイドでなければ!」と思いこんでいる人は、市販薬にも注目してみてはいかがでしょうか。
保湿剤は、保湿作用の違いから、『エモリエント』と『モイスチャライザー』の2つに分類されます。
『エモリエント』は皮膚を覆うことで皮膚表面からの水分の蒸発を防ぎ、間接的に角質層の水分を上昇させます。いわゆる“ふた”の役割をするものです。ワセリンがその代表で、その他にはミネラルオイルやオリーブ油も『エモリエント』に分類されます。
『モイスチャライザー』は天然保湿因子(NMF)などを含み、角質層に直接的に水分をあたえるものです。ヘパリン類似物質はモイスチャライザーの1つです。その他には尿素やヒアルロン酸も「モイスチャライザー」に分類されます。
保湿成分の分類 | 作用 | 成分例 |
---|---|---|
エモリエント | 角質層から水分が逃げないように、皮膚表面にふたをすることで、保湿作用を示します。 | ワセリン、ミネラルオイル、オリブ油、スクワラン など |
モイスチャライザー | 角質層に水分を直接的に供給することで、保湿作用を示します。 | ヘパリン類似物質、尿素、グリセリン、ヒアルロン酸 など |
ヘパリン類似物質は同じ医薬品の有効成分である尿素よりも高い保湿作用をもつともいわれています。ヘパリン類似物質を継続して使用することで角層の水分保持機能を改善し、肌の正常なバリア機能を取り戻すことを助けます。また、血行促進作用や抗炎症作用もあわせもつため、肌荒れへのすばやい効果も期待できます。
ヘパリン類似物質はモイスチャライザーとして保湿作用をもつ成分ですが、実際のクリームやローションではモイスチャライザーとエモリエントの両方の保湿作用をもつことがあります。たとえば有効成分としてヘパリン類似物質が配合されると同時にワセリンを含む油性クリームは両方の保湿作用をあわせもち、バランスよく皮膚機能を高めてくれます。
ヘパリン類似物質は副作用の発生頻度が少なく、0歳の赤ちゃんから使用できる安全な成分ですが、まれに皮膚の赤みや発疹、かゆみ、ピリピリ感などの副作用がみられる場合があります。これらの症状を強く感じたり、症状が長引いたりするときは、使用を中止して医師、薬剤師に相談しましょう。
また、ヘパリン類似物質そのものではなく、クリームやローションに使われている添加剤により刺激を感じる人もいます。この場合、異なる添加剤を使用しているクリームやローションに変えると、快適に使用できることもあります。
ヘパリン類似物質には血液が固まることを抑制する作用があるので使用時には注意が必要です。出血のリスクが高い病気をお持ちの方(血友病や血小板減少症、紫斑病など)や、出血がある部位への使用はひかえてください。
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